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【特集】秋の三溪園

2020.10.27

横浜に秋を聴く。―この秋だから楽しめる三溪園がここにある― 

横浜のイメージとは一線を画す、正統の“日本“に出会える三溪園。とくに秋は、その情趣をひときわ感じさせてくれる季節です。葉の色は日々移ろい、わたしたちの目に映る景色は刻々と変化していきます。日本の四季がもたらす自然の美しさを強く感じられる瞬間がここにあります。

この秋は、重要文化財3棟に注目した企画をご用意しました。『紅葉の古建築公開』では、重要文化財「聴秋閣」・「春草廬」と紅葉とが織りなす景色をご覧いただけます。企画展『臨春閣―建築の美と保存の技』では、現在修理中の「臨春閣」に施された装飾の数々を間近でご鑑賞いただけます。

この秋、三溪園で風雅な秋のひとときを過ごしてみませんか。

 

110年前に創られた山水画のような世界―聴秋閣

原三溪が自らの理想を追い求めて創り上げた内苑。なかでも聴秋閣とその奥に広がる渓谷は、大正11(1922)年に、庭造りの最後に造成されました。言うなれば、この場所をもって、三溪園は完成したのです。
奈良から運び込んだ大岩を流れの各所に配した一帯は深山幽谷の趣そのもの。近代に造られた三溪園の写実表現の特徴がみられます。そして渓谷の中腹よりかえりみれば、そこには紅葉に囲まれた聴秋閣と遠く丘上にそびえる三重塔が、一幅の山水画を見るがごとき眺めを造りだしています。まさに南画家であった祖父の血を受け継いだ、三溪の画才がみごとに活かされた絶景です。

『紅葉の古建築公開(重要文化財 聴秋閣・春草廬)』では、聴秋閣とあわせて遊歩道を期間限定で公開します。三溪が描いた絶景を眺められる特別な機会です。

 

古寺の風情を写した三溪の粋―春草廬

原三溪 大正12年の茶会にて

聴秋閣の華やかな紅葉の風情とは一転。もう一つの特別公開建物「春草廬」付近は古寺のものさびた雰囲気が漂います。石棺や東大寺旧蔵と伝えられる伽藍石(礎石)などが露地周りに添えられ、かつて目の前の高台には吉野・金峯山寺から移築された鐘楼もありました。
付近にそびえる2本のイチョウの大木が、金色の葉を落とす晩秋になると、三溪はここでしばしば茶会を催したとされます。散り敷いた落葉は当日まで誰にも踏ませず、客が帰る際には鐘楼の鐘で見送るなど、三溪の催す茶会には、茶室の外の景色までも取り込んだ独特のスタイルがありました。三溪が近代三茶人のひとりに数えられる所以です。

詳細:紅葉の古建築公開―重要文化財 聴秋閣・春草廬

 

茶人 原三溪考案の特別メニュー―三溪そば

聴秋閣の移築をもって全園が完成した三溪園では、翌年春に完成披露を兼ねた大きな茶会が催されました。現在の聴秋閣付近には藤棚の場所に山吹茶屋が設営され、参会の客には「山吹そば」なる料理がふるまわれました。

麺は細めのうどんで、汁はなく、上にそぼろ肉の中華風あんを掛けたもの。客の着物に汁が飛ばないようにとの配慮から考案されました。当時としてはモダンな料理で、三溪考案の料理のなかでも自慢の一品でした。他に類のないこの料理は、三溪園内にある茶店「待春軒」に受け継がれ、名物「三溪麺」として、今も味わうことができます。

詳細:食事処とおみやげ

 

 原三溪が魅せられた秀吉ゆかりの建築―臨春閣

古建築は、ときに厳しくもある自然と寄り添いながら、長い歴史の中で修理を重ね、三溪園の魅力をいまに伝えています。およそ30年周期で訪れる大規模な古建築の修理工事は、日本庭園が自然とともに歩む宿命でもあります。

三溪園では、昨年から内苑の中心的な建造物「臨春閣」の保存修理を行っています。この建物はかつて豊臣秀吉が京都に建てた聚楽第の遺構とされ、三溪が11年をかけて念入りに移築した建物です。3つの棟の組み換えや瓦から檜皮・こけら葺き屋根への変更など、外観は大きく改められた一方で、内部の間取りや意匠は移築前の姿が保存されています。

大正6(1917)年の移築完了まもなく、ここでは三溪の長男・善一郎と團琢磨男爵の四女・寿枝子との婚儀が執り行われました。日本髪を結い手燭をもった女性たちが、建物の奥・上段の間に座る新郎新婦のもとに来客をいざなう一夜の光景は、まさに桃山時代の昔をよみがえらせたひとときでした。

 

修理中の今だからこそ実現した企画展『臨春閣―建築の美と保存の技』

  第2次世界大戦により、この秀麗な建物も被害に遭いましたが、昭和28(1953)年からおよそ5年の歳月をかけて修理を行いました。自然素材により造られた伝統的な檜皮葺きやこけら葺きはおよそ30年周期で修理が必要で、現在は、戦後3回目となる大規模修繕を行っています。

『臨春閣―建築の美と保存の技』と題したこの企画展は、耐震対策をともなう現在の修理工事中だからこそ実現できたもの。

臨春閣内部にちりばめられた数寄屋の装飾は、工事前にいったん取り外され、修理の完成を待っています。これらの装飾を元の位置に戻す前に、園内の三溪記念館に移し鑑賞していただこうという趣向で企画されました。

展示会場には波や菊、桐が彫りだされた欄間やそれに附属する和歌の色紙、中国明朝・清朝期の頃に作られた黒漆に螺鈿で文様を施した扉を転用した地袋戸、壁に埋め込まれていた「板絵十二支図額」など、実に様々な趣向を凝らした数々が並びます。照明を受け、ディテールまでもがはっきりと確認できるそれぞれの作品は、臨春閣のほの暗い中で見るものとは違う美しさを放ちます。

この展覧会は三溪すらもできなかった鑑賞体験ができる二度とない機会です。

詳細:企画展「臨春閣―建築の美と保存の技―」


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