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蓮へのいざない 三溪と蓮のデザイン

2021.07.10

泥の中から清らかな花を咲かせる蓮は、古来仏教や儒教で聖者の花とされ尊ばれてきました。
原三溪がどの花よりもとりわけ愛したのが、この蓮です。
自ら蓮の絵を好んで描き、多数所有した茶室の中でも自らの構想で建てたものを「蓮華院」と名付け、生涯最も多くの茶会を催しました。
また、その最期の時に棺を飾ったのも三溪園の池から切りとられた数本の蓮でした。

 

園内にある建造物や美術工芸品の中には、蓮をモチーフとしたり、デザインに取り入れたりしたものが多数見られます。
いずれも三溪が自らの価値観や美意識により収集あるいは構想、制作したものです。

 

蓮華院

原三溪自身がデザインしたこの茶室、その名前のとおり蓮のイメージが散りばめられています。
小間の天井には蓮の茎、土間には蓮の花で有名な平等院鳳凰堂の古材、そして蓮の彫刻の縁取りがある額もあります。

 

白雲邸

蓮華院と同じく、隠居所として建てられた白雲邸も原三溪自身のデザインによる建築です。
全体に装飾を抑えたなかで、唯一贅沢に造られた空間を最奥部にある奥書院。
三溪が妻・屋寿(やす)のために用意した部屋です。
写真は貴重な銘木がふんだんに使われた棚で、中でも目を引くのは螺鈿(らでん)で蓮の花を表現した戸。
三溪の夫人への思いやりが伝わる場所です。

 

旧天瑞寺寿塔覆堂

内苑はいってすぐ、旧天瑞寺寿塔覆堂の扉にある彫刻は一見、“天女”のようにも見えますが、足元を見れば“鳥”。
背中には翼も生えています。実は、極楽浄土に住んでいるといわれる迦陵頻伽(かりょうびんが)というありがたい鳥なのです。
手には蓮の花。なおさらにありがたさが伝わります。

 

蓮華の形の手水鉢

線香立て?それとも蓮を植えるための水鉢?
本来何に使われていたのかはっきりしていませんが、三溪園では手水鉢として旧天瑞寺寿塔覆堂の向かいに置かれています。
外側に8枚の蓮弁の浮彫りを巡らせているだけのシンプルなデザインですが、存在感のある石造物です。

 

臨春閣の中の蓮

狩野探幽(かのうたんゆう)という人をご存知の方は多いはず。
江戸時代の初めに狩野派と呼ばれる絵師集団を束ねたリーダーです。
現在工事が続けられている臨春閣には、この探幽が描いた襖絵「四季花鳥図」があります。(現在オリジナルは三溪記念館に収蔵・展示)
写真は、この図のうちの夏の情景を描いた部分。
鮮明ではありませんが、目を凝らすと蓮とかわいいツバメの姿が描かれています。
同じく臨春閣内にあるお茶の支度のための部屋・台子(だいす)の間にある水屋では、棚の戸に蓮の茎が使われています。

 

原三溪筆「蓮華図」

現在では大人気の琳派ですが、三溪の時代には意外なことに評価は低く、誰よりもさきがけて注目しコレクションに加えていたのが三溪でした。
輪郭線を描かない没骨(もっこつ)と呼ばれる技法で蓮を描いたこの作品は、俵屋宗達(たわらやそうたつ)などの絵からその表現を学んだようです。

 

原三溪筆「敗荷」(はいか)

剣豪・宮本武蔵は、すぐれた水墨画をのこしたことでも知られています。
原三溪は武蔵の絵がお気に入りだったようで、コレクションに数点を加えていたほか、自身の作品にもその表現や技法をとりいれました。
枯れた折れかかった蓮(敗荷)にカワセミがとまっている様子が描かれたこの絵も、武蔵の作品を踏まえたものです。

 

黒漆須弥壇(くろうるししゅみだん) 横浜市指定有形文化財 原三溪旧蔵

この須弥壇、実は下の壇の蓮の彫刻のあるフレームとは別物です。
原三溪のアレンジによるもののようで、戦前までは源公堂という建物(現存せず)の中にあって、「伝源頼朝座像」(東京国立博物館蔵)の木像が置かれていました。

 

黒漆大壇(くろうるしだいだん) 原三溪旧蔵

大壇は密教寺院で祈祷の際に法具が置かれる台のことです。
この大壇はもと奈良の海龍王寺の観音堂にあったことが知られています。
側面には上向きと下向きの蓮弁を2段に巡らせています。
漆の黒と金箔が貼られた蓮弁のコントラストが印象的です。

 

黒漆蓮文飾経机(くろうるしはすもんかざりづくえ) 原三溪旧蔵

経机は読経や写経の際に使われる机です。
正面にある蓮の彩色がよく残り、金具の装飾も見事。
当初の華やかさが想像できます。

 

「孔雀明王像」(くじゃくみょうおうぞう)

原三溪のコレクションを代表するものといえば、平安時代の仏画「孔雀明王像」。
現在は東京国立博物館が所蔵し、国宝に指定されている名品です。
三溪はこの作品を35歳の時に井上馨から1万円(現在の1千万円以上)で購入し、一躍コレクターとしての名声を高めました。
写真は、これを木版画で忠実に再現したものですが、本物と見まがうクオリティです。


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