三溪園通信
雛を愛で、春を知る
2024.03.03
前号で紹介した合掌造り・旧矢箆原家住宅には、飛騨地方由来の一千点余にのぼる古民具のほか、近年一般の方から寄贈を受けた段飾りの雛人形5セットが収蔵されている。梅が見ごろを迎える2月半ばになると、この雛人形がほの暗い合掌造りの座敷に並べられ、素朴な屋内はひととき華やかな装いとなる。現在も暖簾を掲げる京都の老舗人形店が大正時代に製作した雅な面立ちの人形やミニチュアの御殿をともなった存在感のあるもの、“豆雛”と呼ばれる小さな土人形など、いずれも戦前に作られた雛人形の数々には古格が漂い、江戸時代後期といわれる古民家の建物と違和感なく調和する。また、最上段に飾られる内裏雛が京都と関東とでは左右逆に置かれるなど、それぞれのディテールを観察していくのも楽しい。
どれも各家で大切に伝えられてきた思い入れのある人形たちばかりである。三溪園に移された後も永く遺してほしいと託された貴重なものだけに、長期間の公開は避け、スペースも限られることから、前・後期と飾り替えを行い、紹介している。
旧矢箆原家住宅・座敷の床の間に飾られた雛人形。旧家のたたずまいの中で楽しめる。

(2024年2月号広報よこはま中区版寄稿)














