三溪園

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三溪園通信

初音茶屋と湯茶接待

2025.02.02

外苑大池の奥に歩を進めると、三重塔に至る階段登り口の先に園内の梅では最古の樹齢を誇る臥竜梅数本がみごとな枝ぶりをみせる一画に出る。そして道を隔てた向かいにある、六角形の屋根をした簡素な姿のあずまやが初音茶屋である。

「誰もがお茶をふるまわれる。」大正5(1916)年、三溪園に2か月余を過ごしたインドの詩人・思想家のタゴールがその著作『日本紀行』のなかでこう記したように、当時この茶屋では麦湯や香煎(こうせん)を振り入れた白湯が常に用意され、誰もがいつでも自由にそれを飲むことができた。大正4(1915)年にここを訪れた芥川龍之介は友人であった三溪の長男の善一郎に宛てた手紙のなかで、次のようにこの接待の印象を書いている。「僕は君の所へ去年の夏(中略)ちょっとお庭を見にゆきました。さうして四阿(あずまや)のやうな所で、田舎の女のやうな人の沸かしてくれるお湯をのみました。が、どこをどうしてあすこまで辿りついたか、まるで覚えていません。 “ひとはかりうく香煎や白湯の秋” 即興のつもりで書きましたが、月並なので弱りました。」

その後、この湯茶接待は戦争などでいつからか途絶えてしまったが、昭和57(1982)年に園内の倉庫に保管されていた茶釜がこれであることがわかり、以来観梅会の期間限定でこの茶釜を吊るし、昔そのままの風情で麦湯をふるまっている。

昔の初音茶屋での湯茶接待の様子。現在は観梅会期間中の週末のみ実施。百年前の風情がよみがえる。

(2025年2月号広報よこはま中区版寄稿)

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